Things we lost in the fire

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個人的には、世間で言われるほどの大女優とは思えないハル・ベリーと、眼光で妊娠させる男ベニチオ・デル・トロ主演の、目ヂカラガチンコ対決映画『Things We Lost in The fire』を見ました。

最初は、最愛の旦那さんを突然失い、2人の子供を抱えたまま途方に暮れるオードリー(ハル)の再生物語かと思ってみてたんですが、実は、この映画にはもう1つの物語がありました。

それは、ヘロイン中毒からの再生物語Byデルトロ。

デルトロさんは、オードリーの旦那さんの親友でヘロイン中毒のジェリーという役どころ。ドラッグでロレロレ状態は、デルトロさんの得意分野です。
イスに座って意味のないことをうんたかんたらしゃべってたかと思うと、話してる途中でいきなり白目剥いて静止しちゃうし、死んじゃったのかと思ったら、ビクゥッ!と目を覚まして「Oh... I fell asleep」、だって。
そのヨレっぷり、素晴らしい!!
Booと一緒に大笑いしました。

デルトロはこういうとぼけた演技がいんだよねー。どんなにだらしなくて弱くて、ダメ人間やってても、デルトロさんが演じると必ず哀愁と少しのユーモアがある。あの小汚い風貌と鬼気迫る演技が逆に笑いを誘うって感じ。


その上、この映画、目のクローズアップを多用して、「目で語る」タイプの情緒的な映画。これまたデル・トロ得意中の得意分野!
なんてったって、眼光で妊娠させる男ですから。

この映画、デル・トロのための映画?って思ったくらい。
デル・トロさんも、楽々こなしてる感じでしたね。


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ハル・ベリーは、デル・トロさんに役者として好戦的な感じがちょっとしました。
2人の目がクローズアップするたびに、「負けないわよ~」って火花がバチバチ飛び交っているように見えたのは私だけじゃないはず。
彼女の出てる映画ってあんまり好みじゃなくて、「チョコレート」と「ソードフィッシュ」くらいしか見たことないんだけど(ソードフィッシュはおもしろかった)、意外にチビッコ女優なんだね。

ハル演じるオードリーは未亡人になって、女として母として妻としていろんな意味で男手が必要だったので、ジェリーに一緒に住んでくれと助けを求めます。だけど、自分が思ってた以上にジェリーが良い人で、子供たちもすっかりジェリーになついてしまって、オードリーは死んだ旦那のポジションがジェリーにリプレイスされてしまうような不安感に襲われてしまうんです。

でも実のところ、オードリーが不安がっていたのは、それだけじゃないと思います。

オードリーにとってジェリーは、「死んだ旦那の空虚感を埋める」程度の存在でした。
「眠れないから一緒に寝て」とジェリーに頼んだり、ジェリーがシャワーを浴びている間にバスルームに忍び込んだりっていうのは、明らかにジェリーを誘ってて、無垢な表情を装いながらも、そこににはオードリーの女としての計算が見え隠れしてます。
自分にダメ人間というレッテルを貼ってるジェリーに対して、傷の舐めあいという現実逃避を期待してるところがあったりして、オードリーは無意識にジェリーを利用してたんですね。

ところがその感情が、徐々に人間同士の絆とか愛とかってものに形を変え初めたとき、オードリーはそんな自分の心の変化を許すことができなかった。

だからオードリーはジェリーを自分たち家族から引き離す決意をするのですが、それを告げるタイミングがまたヒドイ。

公園ピクニックの最中、草原の上に敷いたシートの上で、笑い声を上げて走り回る子供たちを幸せそうに見つめるジェリー。ジェリーの横顔に浮かぶ充足された温かな微笑みを認めた後、オードリーは言うのです。

「私は、きっと、二度と幸せを感じることはないだろうなって思うの」

これって、「あなたは今、これこそ幸せだと思ってるかもしれないけど、私は全然幸せじゃないわ。あなたじゃ私を幸せにできないのよ」ってことで、こんなヒドイ言葉、このタイミングで言わないでも・・・って思っちゃった。


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オードリーってとっても計算高くて賢い女性だと思います。どのタイミングでどういう言葉を使えば効果的なのか分かってる。
未亡人という悲しみを誘う役どころであるにも関わらず、女のしたたかさを感じてしまうのは、監督が演出したかったオードリー像なのか、それともハル・ベリーの演技のせいなのか。

ハル・ベリーっていい人そうだし、いつも自信に溢れててキレイだと思うけど、そいうところが繊細で不安定な演技を必要とする映画には、逆効果なんじゃないかな。自分の気持ちが分からなくて迷い続ける雰囲気とか、叙情ってものがないんだよねー。


この映画の見所って本来は、オードリーの心の葛藤にあるはずで、私もそれを追って見たけど、結局のところは、デル・トロさんの演技に全部持ってかれたって感じかな。デル・トロさんがいなかったら、つまんない映画になってたと思います。


思いやりのあるラストはとっても良かったです。


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あ、あと、オードリーの旦那さん役は、X-Fileのモルダーさん。この人、CalifornicationってTVドラマで、モルダーの時とは打って変わった、女好きの落ち目作家ダメ人間を好演中です!モルダーのときより人間味があっていい感じです。
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by myums | 2008-01-20 23:05 | 映画・海外ドラマ さ行  

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