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善き人のためのソナタ

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Booが名古屋出張中のため、ドイツ映画見ました~。

ベルリンの壁崩壊前の旧東ドイツを描いた、『善き人のためのソナタ』。
映画自体の出来どうこうより以前に、国民全員がシュタージュという国家組織によって徹底的な監視下に置かれているっていう、旧東ドイツの体制がまず衝撃的でした。
そして少しでも反体制の疑いがかけられたが最後、秘密裏に家中に盗聴器をしかけられて24時間監視されるのです。そして証拠があがれば拷問のような取調べを受け投獄されちゃう。

いつどこで誰が何を聞いているかわからないので、人々は常に発言に気を配り、余計なことは話しません。たとえ恋人であろうとも家族であろうとも、互いに密告し合って自分の身を守る。

ほんの17年前まで、東ドイツはそんな国だったです。
その事実に驚愕しました。

たったの17年前ですよ?
私がカンチだリカだのとトレンディドラマにうつつを抜かしていた頃、ドイツでは表現の自由も言論の自由もまったくない時代が訪れていたわけです。同じ地球上で同じ時を刻みながら、しかも生活レベルは大差ない国同士なのに、この違いはどうでしょう。

1989年のベルリンの壁崩壊がドイツ人にとってどれだけ大きな意味を持っていたのか、この映画を見て初めて知ったような気がします。あれこそ、まさに世紀の歴史的瞬間だったのですね。


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映画としても、なかなか良かったです。社会派だけど小難しくないし、体制側の人間であるヴィスラーが、劇作家のドライマンを監視し続けるうちに、人間としての一個人に目覚めていく姿は静かながらも胸に迫るものがありました。

監視される側のドライマンと芸術家仲間の反骨精神には、エールを送りたくなりました。クリエイターはいつの時代もアウトローな存在。社会主義にドロップキックなわけですよ。

そしてそして、なんと言っても、ラストシーンが素晴らしい!

2時間以上の淡々とした物語なので正直ちょっとつらかったのですが、このラストシーンを見たら、そんな不満はぶっとびました。

なんと心憎い演出!

目頭が熱くなったよっ!
ドイツ映画って、やっぱりいいですね。


✼おまけ✼
ヴィスラー役の俳優さん、7月22日に胃がんでなくなってました。54歳だって。
映画の中では体制側の人間を演じていたけど、実生活では10年以上の間、シュタージュに監視されていたんだそうです。しかも密告いていたのは、自分の奥さん。

旧東ドイツの人間は、この映画をどう見たのでしょう。目を背けず、まっすぐと受け止められるまでには、まだ時間がかかるのではないかと思います。

by myums | 2007-08-11 01:18 | 映画・海外ドラマ や・ら・わ行  

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