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ぜんぶ、フィデルのせい

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『ぜんぶ、フィデルのせい』を観ました。

おもしろかった!
何より主人公の少女アンネと弟フランソワのキャラがしっかり立っているところが最高。やぶにらみで膨れっ面のアンネは、賢くて頑固で、意見をはっきりと口に出すことのできる子。フランソワは天真爛漫、順応性に秀でた素直な優しい男の子。
この2人の対比が映画の中でも生きてました。


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映画は、70年代のフランスが舞台。欧米や日本で革命活動が盛んだった激動の時代です。ブルジョアで保守派だったアンネの両親も、共産主義に傾倒し突然極左になってしまいます。
アンネの生活は一変。


弁護士だったお父さんは仕事に行かなくなっちゃうし、「マリー・クレール」の編集者のお母さんは、女の人のチューゼツ運動(ウーマンリブ)に夢中で、広いお庭のあるオウチから、狭いアパートに引っ越して、お手伝いさんもベトナム難民とか中国人とかころころ変わるし、変な服着なきゃいけないし、大好きだった宗教の授業にも出れなくなっちゃった!
前の生活のほうがいい!


理不尽な大人たちにいっつも怒ってたアンネ。
そりゃそうだよね。おっきな家の方がいいし、おいしいご飯食べたいし、共産主義ってぜんぜん楽しそうじゃない。デモ行進にまで無理矢理参加させられて、アンネかわいそう。


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しかしそんなアンネも、民族によって信じられている神話が違うことや、保守派のおばあちゃんが言うことと、ヒゲの革命家たちが言うことの違い、団結と流されることの違い、それから本当の自由というものを学んで行きます。

「お父さんたちは前は間違っていたのね? そして今は正しいと思ってる。だけど、どうして今が正しいと分かるの?」
そんなするどい質問をぶつけて親を困らせていたアンネ。だけど今は分かるのです。お父さんもお母さんも、何が正しいのか分からないのかもしれない。ただ、自分が正しいと信じるもの。それがキョーサン主義だったのかもしれないことに。
アンネは、左派でも保守派でもなく、自分が正しいと思うことを自分の意志で選択していくのです。

これからアンネはそのクールな瞳で、この先の世界をどんな風に見て行くのだろう。
弟のフランソワの成長も気になる。
続編作ってくれたらいいのに。


もう1つ、うまいなーと思ったのは、カメラワークも脚本も、9歳のアンネの視点で動いて行くところ。両親がどのように思想を変えて行ったのかとか、外でやってる活動とかの具体的な描写は一切なくて、アンネの冷めた目を通して描かれる大人のバタバタは、滑稽なくらい。
この描き方のおかげで、見てる側に当時の社会情勢の知識がなくても、十分楽しめる作品になってると思います。
まあ、知っていればもっと味わい深くなることは間違いないですが。


インテリジェンスとエンターテイメントがうまく融合した作品です。ぜひご鑑賞あれ!

by myums | 2008-10-16 18:45 | 映画・海外ドラマ さ行  

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