迷子の警察音楽隊

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『迷子の警察音楽隊』を見てみました。

1990年代のイスラエル。
文化交流のために招待されたエジプトの警察音楽隊がたどり着いた地は、砂漠の中の辺鄙な田舎町。招待された身だってのに出迎えもないし、どうなってんの!? と思ったら、間違えて名前の良く似た別の町に迷い込んでいたことが発覚します。
ホテルもなけりゃ、バスも終わってる。
こんな田舎でどうすりゃいいの。

途方に暮れる8人の音楽隊メンバーを、助けてくれたのが、親切な食堂の女主人ディナでした。こうして、長年敵対してたエジプトとイスラエル、言葉も通じない同士のギクシャクした一夜が始まるのでした。

何気なく手に取ったのですが、ほのぼのした笑いと、印象的な色彩や言葉がたくさん散りばめられた、とっても楽しい映画でした。
今のところ、今年のマイ・ベスト!
なんと言っても、音楽隊の水色の制服と、乾いた砂漠の黄色のコントラストが素敵。砂漠を背景にたたずみ途方に暮れる音楽隊のシーンを見た瞬間に、「あ、この映画好き」ってイイ予感がしました。

それから、団長さんとディナが夜の町へデートしに行くシーンも、印象的。
全体的に淡い色調のスクリーンの中で、ディナの紅色のドレスが鮮やかに映えて、それが逆にどこかはかなげで、表向きの強さの後ろに隠れてる彼女の脆さが見え隠れするようでした。
赤いドレスと水色の制服で、向き合って、たどたどしい英語で会話する二人。まっすぐな瞳で団長さんを見つめ、色々質問をぶつけてくるディナと、ディナの視線にオドオドしっっぱなで、言葉が続かない団長さん。


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2人が帰る途中のベンチに座ってしばらくお話しするシーンがあるんですが、この場面は本当に素敵。「ここは公園よ。あそこに子供の遊び場があって、後ろには、海が広がってるの。ほら、ちゃんとイマジネーションを使うのよ」。そんなディナの提案に、厳格で頭ガチガチ昭和レトロな団長さんも、少し楽しい気分になってきます。そして、コンサートで指揮するときの気持ちを聞かれて、言葉でうまく表現できなくて、それじゃとばかりに、想像上の指揮棒を振ってみせる団長さん。まねをして指揮棒を降り始めるディナ。
そのときの団長さんの表情が、柔らかくて、幸せそうで。
あぁ、団長さん、心の底から、音楽を愛してるんだな〜って、私まであたたかい気持ちになりました。

団長さんったら、それまで体もガチガチだったのに、いきなり足を組み始めて、ちょっと饒舌に音楽を語ったりしちゃって、とってもかわいい。


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音楽隊ではアラブの民族音楽を演奏してるという団長さんに、ディナが、「警察隊が、どうしてそんな音楽を?」と聞きます。すると団長さんはこう答えます。

「それは、なぜ人に魂が必要なのかか聞くのと同じことだ」

この言葉を聞いた時、どれほど団長さんが音楽を愛しているのかが伝わってきて、切なくなりました。と、同時に、「そうそう!そうなんだよ」と首をぶんぶん縦に振ってうなずきたくなりました。

たとえば、登山家が山がそこにあるから山に登るように、作家が伝えたい言葉を探し求めて書くように、科学者がまだ見ぬ宇宙の神秘に惹かれるように、哲学者が普遍の真理を求め続けるように、「それ」がなければ魂が枯れてしまうっていうものが、人にはある。

団長さんの魂は、アラブ人としてアラブ伝統の民族音楽を演奏し、素晴らしさを伝え続けること。それがないと、枯渇しちゃう。

その感覚、なんとなくわかるな〜。

ゆるい笑いも、そうとうツボ。こういうあったかい可笑しさってかわいらしくて、大好き。ものすごく密度の濃い映画でした。
予告編、こちら↓

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『ミュンヘン』のときにも言った通り、私は、中東のアレコレってまったく知りません。この映画を見て、エジプトとイスラエルが長年敵対関係だったこと、言語が違うことを初めて知りました。
そういう歴史的背景を知ってたら、もっと深く感じ取れることがあったかもしれませんが、知らなくても、楽しめます。おすすめの一本です!
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by myums | 2008-07-21 16:56 | 映画・海外ドラマ ま行  

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