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キング 罪の王 (The King)

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ガエル・ガルシア・ベルナルの名前を思い出そうとすると、


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ガエル・ガナル・タカになってしまう。
本当の名前は、ガナルカナル・タカ …だっけ?




そんなメキシコの貴公子ガエル・ガルシア・ベルナルの最新作『キング 罪の王』です。


天涯孤独の水兵さんであるガエルくん。水兵さんを退役したその日、仲間から「これからどうすんだ?」と聞かれ、「家に帰るんだよ」と意気揚々に答えます。
”家”って、天涯孤独なのに・・・?

実は、ガエル君にはまだ見ぬ父親がいたのです。お父さんは、テキサス州南部の小さな町で牧師さんをしていました。早速父の元を訪ね親子の名乗りを上げ、ひしと抱きしめ合う。感動の対面。

とはいかず、お父さんはいきなりの隠し子登場に動揺を隠し切れません。特に敬虔なクリスチャンである彼にとって、ガエルくんの存在は消したい過去そのもの。
「いや、あの、まあ、またいずれ電話してよ。プライベートで会おう」と、よもすれば怪しい仲ととられかねないことを言ってガエルくんを追い払ってしまうのです。

「家へ帰るんだ」
と瞳をキラキラさせて歌うように言っていたガエルくん。
ガエルくんの心には、優しい父と新しい家族に囲まれた幸せな自分の姿があったのでしょう。そんな淡い夢は、父の拒絶とも取れる態度によってけちょんけちょんに壊されてしまいました。

No Place to go.
もう、帰る家は、ない。


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その後、ガエル君はお父さんの娘(つまりガエル君の義妹)に近づきます。この義妹にガエル君は一目惚れをしていたのです。ガエルくんを義兄だとは知らずに、彼の魅力にどんどん惹かれていく妹。そして2人はついに一線を越え・・・。


妹はとてもそうは見えないけど、16歳。近親相姦に加えて、この年齢もまた背徳の味です。SEXが終わったあとに白い下着を着け、制服に着替えて、白いソックスを履く。こういうのって、女の私でもアンバランスなセクシーを感じます。
この女優さんの実年齢は、20代後半だって。ガンバッタヨ!゚.+:。(・ω・)b゚.+:。グッ



この映画は、近親相姦というタブーが売り文句になってますけど、本当のテーマは、「宗教に対する疑問」、転じて「信仰者に対する皮肉」じゃないかな。
お父さんが牧師をしてる宗派って、進化論を否定したりして胡散臭いんですよ。
実の息子がギターでクリスチャンソングを弾き語りするシーンは、ナポレオン・ダイナマイトの再来かと思いました。気合の入らないナルシストって感じ?
カラオケで異様に悦に入ってる人みたい。←周囲に吹き荒れるツンドラ気候。
と言っても、映画の中の観衆たちは信徒ですから。彼の演奏もお父さんの演説も、感動して聞いてるわけです。


『ヒトラー 最後の12日間』
でも書きましたけど、私は集団心理とか、盲目的な執着ってなんとなく空恐ろしいんです。


牧師であるはずのお父さんは、ガエルくんの存在を受け取めることができませんでした。このお父さんは、非常に人間くさいんですね。それは別に悪いことじゃなくて、とても自然なことだと思うんですが、お父さん自身はそういう自分を認めたくない。聖職者という立場上、自分は常に潔白でいなければならない。


偽善で固めた父親の前に立ち尽くす、罪の限りを尽くした息子(ガエルくんの犯す罪は近親相姦だけにとどまらないのです)。そのとき父は、許すことができるのか。果たして罪の息子のために心から祈ることができるのか。
この場合、神から与えられた試練というより、究極の挑戦状たたきつけられたって感じですね。「お前にそんなことができるのか?ほれほれ。 神様より」



信仰してる宗教にのっとって、罪を許す。私はそういうのって「許す」とは言わないと思うんです。キリストが十字架に磔られて、世界の罪は償われた。だから全ての罪人を許そうっていうのは、恩赦であって、許しじゃない。人間なんだから、怒ったり恨んだりするのは当たり前で、それを癒すのは神じゃなくて人間なんだと思うんです。


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この映画がいいなと思うのは、こういう重いテーマを、透明度の高い物語に仕上げているところです。情景と表情と音楽に彩られて、言葉は隙間を埋める程度にしかありません。
セリフの少ない映画って、無意味なシーンがやたら長いくせにそこに意味を持たせようとしたりするのもあるけど、『キング 罪の王』はダラつくシーンもなく、役者の演技もうまくて表情だけで十分色々なものを語ってくれてました。


叙情的な映画が苦手な人でも見ごたえあると思います。
ドキュメンタリータッチな部分も多くて、私はかなり好きでした。Booは途中で寝ちゃったケドネ(ノω`*)

by myums | 2006-12-02 17:58 | 映画・海外ドラマ か行  

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