17歳の肖像 -An Education-
2010年 04月 04日
『17歳の肖像』を観ました。
1960年代、ロンドン郊外の中流家庭に暮らす16歳のジェニーは、オックスフォード大学進学を目指す優等生。毎日チェロの練習と勉強に奮闘しているけど、それはすべて父親の期待、というより命令に応えているだけで、ジェニー自身は、フランスの文学や音楽、パリの華やかで自由な文化が大好き。
部屋でこっそりシャンソンを聞きながら、フランスに思いを馳せるのが唯一の楽しみだなんて、自分の人生はなんて退屈なんだろう。
こんなに我慢してまで、女性が学歴を積んで何になるの? 何がやりたいのかも分からないのに。
ロンドンなんて、いつも灰色で暗くて、素敵なことなんてありやしない。あー、つまんない!
そんな風にくすぶってたジェニーは、ある日、倍以上も年上のデイビットという男性と出会い、恋に落ちます。
ウィットでインテリジェンスに富んだ会話、初めてのナイトクラブ、絵画オークションに、美しく着飾って出かけるゴージャスなレストラン。ジェニーは、デイビットによって、怠惰で刺激的な大人の世界を教えられるのです。
観てる側としては、デイビットが怪しい男で裏があるのは明らかなんですが、決してジェニーを愚かだとは思えないんです。
だって、ティーンネイジの女の子なんて、みんなそんなもんじゃない?
年上で、未知の世界を教えてくれる彼。お金があって、一人暮らしで、車を持ってる優しい彼。
そういう恋愛がステイタスだし、きらびやかでゴージャスな世界に憧れる。自分が17歳の頃を思い出してもそう。とにかく今の生活から私を連れ出してくれる男性を探してました。
そういう考えこそ、子供の甘えだということを、後で思い知らされるんですけどね。
ジェニーも、かなりショッキングな形でデイビットに裏切られ、自分の愚かさに気付かされます。そこからの展開は、ちょっと出来過ぎでしたが、映画全体としてはすごく良かったです。
まず、なんといっても60年代のファッショやヨーロッパ文化が素敵!
花柄や刺繍を施されたエレガントなカティングワンピースに、パールアクセサリー。トップにボリュームを持たせて緩くカールさせたヘアスタイル。
アンティーク家具や、街灯、車も、ノスタルジックな雰囲気が満載で、観ているだけで心がときめきます。
陰鬱に感じるほど暗く描写されるロンドンと、白い建築物が多く日差しに溢れパリとの対照的な描き方も、ジェニーの心象を分かりやすく表していて良かったです。
実際には、パリだって冬は暗いですけどね。
それから、「An Education」という原題が好き。
ジェニーの父親が強制的なまでに課す勉学というEducation。
デイビットから施される未知の世界へのEducation。
男に裏切られて学ぶ人生というEducation。
そのすべてを無駄にしない生き方とは?
それを模索するEducationに気付いた時、人は大人の階段をのぼり始めるのです。
そういった道徳的メッセージの中に、バージンの青臭い女子高生を大人に仕上げていくロリータ的エロティシズムを織り込んで、なかなか見応えのある、バランスの感覚の良い作品に仕上がっていました。
「人生に近道はない」
ジェニーのその言葉が印象に残ります。
by myums | 2010-04-04 19:44 | 映画・海外ドラマ さ行