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ファクトリー・ガール

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『ファクトリー・ガール』を見ました。

60年代、アンディ・ウォーホールに見いだされ、ポップカルチャーのアイコンとして一世を風靡したイーディー・セジウィックの伝記的映画です。

イーディーは上流階級出のお嬢様。芸術家を目指してNYの美大に通っていたところ、あるパーティーでコマーシャルアートのスーパースター、アンディーに見いだされ、業界人の仲間入り。美人で自由奔放、センス抜群なイーディ―に誰もが魅了され、ファッションアイコンとして人気を博し、当時絶大な支持を得ていた歌手(本人から使用許可が降りなかったらしく名前は変わってたけど、ボブ・ディラン)と恋に落ちたりわけですが、結局はドラッグに溺れ、アンディーにも時代にもほされ、28歳の若さでO.Dで死んでしまいます。


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そんなイーディーを演じるのは、シエナ・ミラー。
彼女は、めちゃくちゃ美人なのに、モデルとしても女優としてもオーラが足りなくて、没個性なので、あんまり好きじゃないんですが、この映画では好感度高かったです。

私はこのイーディーって人の存在すら知らなかったのですが、高貴であるけれど家庭環境は劣悪で、兄弟が自殺したり、父親から性的暴行を受けていたりして、精神病院に入院してた時期もあったようです。
(映画の中ではそういう設定でした)

イーディーが時々見せる、トラウマを心に隠し持っている人特有の表情。怯えた瞳と卑屈な笑顔ってのをシエナはうまく演じてました。

でも、一番重要なイーディーという人間の輪郭がぼやけてしまっていたのが残念。
「彼女は素晴らしい!America's it Girl!」と賞賛される割に、そこまでの輝きはなく、「かわいいけど代わりはいそう」的な感じだったし、多面的で強さの裏に弱さを隠し持つ女性という雰囲気でもなく、「純粋だけどNaiveなお嬢さん」的な印象でした。
これはイーディーのコマーシャル活動や心の葛藤ををサラッとなめて終わらせてしまった脚本にも問題があるし、その少ないチャンスの中でイーディーの本質を表現することのできなかったシエナの力量不足もあるかな。


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ファクトリーと呼ばれ、当時の新進気鋭アーティストたちのたまり場となっていたアンディーのアトリエでドラッグやったり、なんだかよく分からないコンテンポラリーな映画を撮影したり、そういう退廃的なシーンばっかりフォーカスされてて、60年代のアングラがどんなものかってのはよく分かったんですが、世慣れてないイーディーが堕ちて行くことも容易に想像がついちゃいましたね。

ただ、イーディーの場合、ドラッグやって破滅したっていうより、もともと破滅型な性質だったんだと思います。アンディと手を切るチャンスはたくさんあったのに、そうしなかった。「アンディを信じていた」と彼女は言うけど、本当にそうとは思えない。彼女くらい感受性の豊かな人だったら、自分の中で警鐘は鳴っていたはず。

映画の中で彼女は言います。

「I made decisions, life desions that I regret」

このセリフを聞いたとき、後悔すると分かっていながらも誤った選択をしてしまう、そういう生き方しかできな自分を受け入れてる感じがしたんですよね。
「しょうがないの、そういう風にしか生きられないのよ」って。
イーディーは、闇を抱え続けた人間だったんでしょうね。


イーディーをスターダムへ押し上げた人物であるアンディ・ウォーホールは、ポップアートを誕生させたアーティストで、その名前を知らない人でも作品なら見たことあるはずです。

ファクトリー・ガール_c0057810_21353940.jpg←アンディの代表作品。


アンディは、有名人とかコマーシャルなものに弱くて、プライド高くて、意地っ張りで、人の痛みがわからない高慢ちきな芸術家。
だけど、心の底では罪悪感を抱えてて、精神薄弱で、そんな弱さを他人に悟られまいと必死に隠して冷淡を気取ってるだけの奴。

いつでも誰かと電話で話したり、お気に入りを傍に置いてるくせに、誰にも固執しないのは、孤独と対峙できない弱さであり、人と裸でぶつかり合う勇気のなさの現れ。
そして使うだけ使って捨ててしまったイーディーに対して吐く心ないセリフとは裏腹に、一瞬見せる後悔に歪んだ表情。

アンディを演じたガイ・ピアーズは、アンディのこの二面性をすごく良く演じてました。イーディーの伝記映画なのに、アンディの方が強く印象に残ったくらい。

アンディとイーディーは、互いの内に同質の弱さがあるのを感じていたのかもしれません。それが二人を引き合っていたのに、イーディーは純粋さ故にアンディに入り込み過ぎ、アンディは自分の領域を守りたいという自己防衛心からイーディーを拒絶してしまった。

アンディって人は、自分でも自分を持て余して、疲れる生き方してたんじゃないかなー。誰にも本当の自分を見せない、っていうか、見せる術を知らずに。

イーディーにしてもアンディにしても、自分の生き方に選択肢を与えないどころか、選択肢があることすら思いつかないところが、破滅的で哀れ。
60年代って、ファッションやエンターティメントはポップでコマーシャルだけど、人の心は退廃的なムードが漂う時代だったのかな。


コネタ。
アンディの取り巻き(?)の一人にメアリーケイト・オルセンが!
しかもエキストラのような役で!
びっくりでした。

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by myums | 2008-11-09 00:10 | 映画・海外ドラマ は行  

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